背中のアーチを安定させる
胸のトレーニングの代表として真っ先に思い浮かぶのが、ベンチプレス。
と言う方は多いと思います。
男性は何キロ挙げられるかを目標にしてトレーニングをしている方もいらっしゃるでしょう。
女性は知っているけど、出来るか不安だったり、バーベルを扱う恐怖心などで敬遠されたり、やった事のない方が多数だと思います。
木島のトレーニング指導でもベンチプレスは行いますが、胸のトレーニングの為に行おうとしていません。
結果的に動作の特性上、肩関節の水平屈曲をするので大胸筋が働き胸のトレーニングになってしまうのですが、狙いはそこにありません。
何のトレーニングにしているかと言うと、
背中です!
そもそもベンチプレスを安全に行うには背中の強さが必要です。
オーソドックスなベンチプレスは、脊柱のアーチを作って、そのアーチを動作中崩さない事が安全・効果的に行う為には必須となります。
アーチを崩してしまうと、肩甲骨が後傾した状態で肩関節の水平伸展が行われるので上腕骨頭が前突して肩の負担が増してケガをしてしまう確率が上がります。
また効果面でも、アーチが崩れると肩甲骨の外転の動きが協調されて大胸筋ではなく前鋸筋が働き、胸のトレーニングの効果が損なわれます。
(プッシュアップのように前鋸筋を狙っているなら別ですが。だったらプッシュアップをした方が良いでしょうけど。)
その脊柱のアーチを作るには、胸椎伸展位をキープする力がないと重りの負荷に耐えられませんから、必然的にベンチプレスは背中のトレーニングとなります。
腰は反って正解
背中のアーチを作ると言うことは、腰も反ります。
胸椎が反っているのでその下の腰椎も反るのは当たり前です。そもそも腰椎は前方のカーブが自然ですから。
なので、腰を反らさないようにしてはいけません。
胸椎伸展の力でアーチを作るとそれにつられて腰椎伸展位になるだけなので、胸椎伸展位を保ち続ければ背中で支えているので、腰の負担はありません。
良くベンチプレスをしていて指導されるのは、「お腹に力を入れて!」と言われた事、聞いた事があると思います。
お客様もお腹に力を入れようとします。
そうすると、腰は沈んでカーブが消失してしまいます。
これでは背中への負荷が下がるので、狙いからズレてしまうわけです。
でもお腹に力を入れないと「腰を痛めそう」と言う不安を聞きますが、ちゃんと背中の力が抜けなければ痛める事はありません。
お腹に力を入れる事が腰の負担を軽減するのではなく、腰椎が動作中動くから腰で支えようとして腰を痛めるのであって、胸椎伸展させる背中の力が抜けなければ問題はありません。
実際に木島が上記のように指導して、腰が痛いと言う方はいらっしゃいません。
狙いを持ってトレーニングをする
トレーニングは、先入観を持って行うと思ったような効果が得られない可能性もあります。
特にタスク思考になると良くないです。
例えば、
ベンチプレスなら「バーを挙げる」
ラットプルダウンなら「バーを下ろす」
これらの課題は、身体にとっては沢山の選択肢があって、様々な動かし方で達成出来ます。
でもトレーニングと言うのは、特定の狙った筋肉の強化が目的になっているはずです。
(シェイプアップ、姿勢矯正、パワーアップ他でも筋肉の強化によって成されます)
ベンチプレスであれば、大胸筋の強化。
バーを持ち上げれば強化はされるけど、安全に効率的かは別物。
大胸筋を鍛える為の構造をブレークダウンする必要があります。
ベンチプレスでの大胸筋の機能は、肩関節の水平屈曲。
↓
負荷を漏れなく大胸筋に与えるには動作をブレずに安定させる。
↓
水平屈曲を安定させるには、肩甲骨の位置が動いてはダメ。
↓
その肩甲骨の位置は、肩が安全で大胸筋のストレッチが効いて効果を最大化するなら、内転下制位。
↓
肩甲骨を内転下制位で保つには胸椎伸展位でないと肩甲骨がその位置に収まらない。
↓
動作中常に肩甲骨の位置を保たないと肩関節の軸の位置がズレて、大胸筋の長さが安定しないのでトレーニングの確実性が落ちてトレーニングクオリティが下がる。
↓
という事は、動作中ずっと胸椎伸展位を保つ事で肩甲骨の位置を安定させれば、大胸筋へのトレーニング効果を最大化出来る。
↓
であれば、大胸筋を鍛える為の前提条件は、胸椎伸展位の維持が可能な胸椎周りの筋肉の強化。
↓
そうなると、ベンチプレスでまず狙うべきなのは背中の強化。
こんな感じで、種目の各関節の関節運動を考慮していくと、教科書に書かれている内容とは少し違った解釈が出来てきます。
教科書に書かれている事は、その種目を行う為の身体の準備が出来ている事が前提で、そのやり方を書いています。
でも実際は、その身体の準備が出来ていない事の方が多いので、その準備について着目しないとトレーニング効果を出す事が出来ません。
トレーニングは、先入観を捨てて、今どこを鍛えるべきなのかを考慮してから行うと、トレーニングの効率化が出来ますよ。